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漫画「ひとりでしにたい」
著者:カレー沢薫
2025年にドラマ化もされている人気の作品
【はじめに|裏切りは突然に】
「結婚したほうがいいのか、それともこのままでいいのか。」
そんな迷いを一度でも感じたことがある人にこそ、この作品は刺さるかもしれない。
最初にこれだけネタバレしておく。
様々な事情や理由はあれど、結婚や出産を選ばず生きる、いわゆる「おひとりさま女性」を描いた作品は、今の時代決して珍しいものではない。
年齢や境遇が自分と近ければ、作者や主人公に感情移入し、仲間意識のようなものが芽生えたりもするだろう。
その生き方に励まされたり、参考にしている人も少なくないのではないだろうか。
ひとりで生きる苦労や悩み、そして自由に自分の人生を謳歌する喜び。
自分自身と重ね合わせたり、なかば同志を応援するような気持ちで読み進めていると、突然、話の中に…
“理解ある彼くん or 旦那”が生えてきたことはないだろうか???
「こんなわたしだけど、今は彼くん(旦那)が支えてくれてます♡」
なんて言われたことはないだろうか???
その一言で、今までの話はいったいなんだったのか??となるだろう。
完全にジャンル崩壊だ。
冒頭に注意書きを求める。
「そうか、そうか、つまり君はそういうやつだったんだな」
と、失望のあまりエーミール化した経験がある人もいるのではないだろうか。
わたしにはある。
わたしと同じように、そんな経験があるエーミールたち。
安心してほしい。
この漫画『ひとりでしにたい』には、
“理解ある彼くん”は生えてこない。
少なくとも、2026年4月現在の最新話まで読んだ限り、おもしれー男はひとりいるが、物語の軸は一貫している。
タイトル詐欺もジャンル崩壊もしていない。
初志貫徹してくれそうな、“おもしれー女”が主人公である。
【作品概要|「終活」から始まる異色の物語】
主人公は学芸員として働く35歳・独身女性の山口鳴海。
物語は、彼女の伯母が“孤独死”したという知らせから始まる。
発見が遅れ、かなり衝撃的な最期だった。
この出来事をきっかけに、紆余曲折ありながらも、鳴海は「ひとに迷惑をかけず、ひとりで最期を迎えるための終活」を始める。
あらすじ|「ひとりで生きて、ひとりで死ぬ」という決意
美しく、仕事もでき、憧れの存在だった伯母。
そんな彼女の最期を聞かされ、鳴海は強い衝撃を受ける。
さらに追い打ちをかけるのが伯母の弟である父の一言だ。
「結婚も出産もせず好き勝手やった罰が当たった」
作中では、このような厳しい価値観も描かれている。
これに対し、鳴海は激しく憤る。
女が結婚しないことは、罰当たりなのか。
子どもを持たない人生は、報いを受けるべきものなのか。
しかし、恐怖は理屈では抑えられない。
「自分も同じ最期を迎えるのではないか」
その不安から、鳴海は迷走を始める。
弟嫁にすり寄り煙たがられたり、婚活に手を出し、妄想に取り憑かれたりと、ひと通り暴走する。
生前分与で親に支援してもらって買ったマンションや、飼い始めた愛猫についても、もしかしてこの選択は早まったのでは…?と不安を抱く。
「結婚しろ」「子どもを作れ」
そう責められ続けてこっちが動き出したら、遅いだの考えが足りないだの非難される。
紆余曲折の末、彼女は気づく。
他人に頼ることで、この問題は解決しない。
そして決意する。
「ひとりで生きて、ひとりで死ぬ」
30代半ばにして始まった終活は、やがて現実を突きつけてくる。
仕事、老後、親の死、お金、社会制度。
見て見ぬふりをしてきた問題の数々である。
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【この漫画が容赦ない理由|現実から目をそらさせてはくれない】
未婚女性への風当たりの強さ、雇用の不安定さ、老後資金、親の介護や死。
どれも重く、面倒で、できれば考えたくない話ばかりだ。
「まだ早い」「よくわからない」「めんどくさい」と言い訳して後回しにしてきた問題を、容赦なく突き付けてくる作品である。
【重いテーマでも読める理由|反省と成長ができるおもしれー主人公】
普通であれば、テーマがリアルで重すぎて、同世代の似た境遇のわたしとしては、正直あまり読みたくないジャンルだ。
深く考えすぎるとネガティブ沼に沈み込んでしまう。
しかし本作は、基本的にテンポのいいギャグ漫画である。
主人公の鳴海という人間がとにかく面白い。
そして「この親にしてこの子あり」な愉快でHIPHOPな山口家。
自分を顧みて、愚かさを認め、反省し、少しずつ成長していく。
なんだかんだ、本当に色々あったが、鳴海は他人を理解はできなくとも否定したりしない。
寂しくならないように、孤独にのまれないように、楽しいことをいっぱい見つけて、小さな希望をたくさん集めて、楽しく生きたい。
決して強がりではなく、自分を知って、認めたうえで、生き方を自分で決めて進んでいる。
そんな鳴海からは、明るい未来が見えるようで暗い気持ちにはならずに楽しんで読むことができる。
そうでなければ、心に大ダメージを負っただけで終わっていただろう。
【自分の人生の責任をとるのは自分だけ】
結婚すれば安心なのか。
子どもがいれば孤独ではないのか。
誰かに支えてもらえば、問題は解決するのか。
大切な人と共に歩む人生は、確かに大きな支えになるだろう。
だが、それが孤独や不安を必ず解消してくれる保証はない。
現に、わたしの周りを見ても、結婚してよかったと幸せを感じている人がいる一方、後悔して嘆いている人もいる。
独身でも充実した生活を送っている人もいる。
どちらを選べば正解か、なんて単純な話ではないのだ。
結婚していようが、していまいが。
家族がいようが、いまいが。
最終的に、自分の人生の責任を取るのは自分だ。
ここだけは、他のだれにも代わってもらえない。
【正解はない、それでも選ぶしかない】
どの道を選んでも、後悔や迷いは生まれるだろう。
あのとき別の選択をしていたら違った未来があったのではないか?
そう考える“タラレバ”が消えることは、おそらくない。
だからこそ、世間一般の普通や常識ではなく、自分の声を聞いて、自分で選ばなければいけない。
他人に流されて選んだ道では納得できない。
その後の苦労にも耐えられない。
どんな人生を選ぼうが、結局それを否定する人や反対する人は必ず出てくる。
本当に自分が望んでいることではない道を、世間の目や評価を気にして歩くのはいやだ。
人生に迷いや苦労、後悔はつきものだと思う。
避けて通れないなら、自分で決めた道を歩きたい。
自分で選んだ道であれば、たとえ失敗してもまた立ち上がれる。
そうやって生きていきたい。
【まとめ|「ひとりで生きる」ための準備】
本作を読んで、考え方は大きく変わった。
ひとりで生きることは、だれにも頼らずに生きることではない。
だれにも頼らず、迷惑をかけずに生きることは不可能である。
ひとは必ずだれかに支えられながら生きている。
そのうえで、備えることはできる。
終活とは、ただ死ぬ準備をすることではない。
「ひとりでよりよく生きるための準備」でもある。
わたしは現在、NISAや投資について学んでいる。
“お金”は間違いなく強力な武器だ。
だがそれだけでは足りない。
福祉や制度を知ること。
保険を見直すこと。
そして、周囲の人間関係を大切にすること。
それらすべてが、「ひとりで生きる力」になるのだと気づかされた。
この漫画「ひとりでしにたい」は、結婚するべきかどうか、子どもを持つべきか否かを問いかけてくる話ではない。
世間体や普通の幸せと言われることではなく、自分はどうしたいか。
何が好きで、何が嫌いなのか。
どんなことが楽しいと思えるのか。
どんなことに幸せを感じるのか。
主人公の鳴海を通して、それを考えるきっかけを与えてくれる作品だ。
この漫画がどんな最終回を迎えるのかまだわからないように、わたしの人生もまだまだ連載中だ。
なにが起こるかなんて、わからない。
備えて準備を怠らず、なんでもない日常を大切に楽しく生きていこうと思う。
もし少しでも気になる部分があったなら、実際に読んでみることで受け取り方も変わるかもしれない。
自分の状況や価値観によって、刺さるポイントは人それぞれ違う作品である。
同じように悩んでいる人にとって、考えを整理する助けになる一冊になるのではないかと思う。
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※試し読みができる場合もあるため、内容を少し確認してから判断できる。
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